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慶安の御触書とは･･･。　江戸時代前期の最大の飢饉である寛永の大飢饉(１６４１～１６４２)により，諸国で多数の飢餓人・死者が出るなか，幕府は小農民の経営を維持させるため，慶安御触書を出したといわれ，その内容は，農業経営のあり方，生活のあり方など細部にわたる。決められた年貢さえ済ませればそれ以上の恣意的な収奪はないと農民保護政策の一面も読み取れる。また，自給自足を強調するだけでなく，年貢を納めた上で経営を維持するために，「商い心」の必要も説いている。売り買いを経営の中に取り込んだ農業経営が早くから想定されていると言える。

社会科授業用配布資料（慶安の御触書）こちら

＜慶安の御触書＞

一　公儀御法度を怠り，地頭・代官の事をおろそかに存ぜず，扨又名主・組頭をば真の親とおもふべき事。

一　百姓は分別もなく，末の考もなきものに候故，秋に成候得ば，米・雑穀をむざと妻子にもくはせ候。いつも正月・二月・三月時分の心をもち，食物を大切に仕るべく候に付，雑穀専一に候間，麦・粟・稗・菜・大根，其外何にても雑穀を作り，米を多く喰つぶし候はぬ様に仕るべく候。・・・・・

一　男は作をかせぎ，女房はおはたをかせぎ，夕なべを仕，夫婦ともにかせぎ申すべし。然ばみめかたちよき女房成共，夫の事をおろそかに存，大茶をのみ，物まいり・遊山ずきする女房を離別すべし。・・・・・

一　百姓は衣類の儀，布(麻)・木綿より外は，帯・衣裏にも仕る間敷事。

・・・・・年貢さへすまし候得ば，百姓程心易きものは之無く，よくよく此趣を心がけ，子々孫々迄申伝へ，能々身持をかせぎ申すべきもの也。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 (徳川禁令考)　

　難解な言葉もあると思いますが，何度も読んでみると何となく解ってくるような気がします。

　慶安の御触書（配布資料用）

一　幕府の決めたきまりを守らなかったり、村をおさめる地頭や代官を無視したりせず、名主たちを本当の親と思ってその言いつけを守ること。

一　朝は早起きして田畑の草をかり、昼は田畑を耕し、夜には縄をなったり俵を編むなど、それぞれの仕事を油断なく行うこと。

一　酒やお茶を買って飲んではいけない。(自分で作ること。)

一　百姓は肥料を用意しておくことが大事だから、トイレを広くとり、雨降りのときに雨が入って肥料をだめにするようなことのないように気をつけること。

一　百姓には先々のことも考えないで、収穫のあとの秋には米などを妻子にたくさん食べさせてしまい、あとになって米がなくて困るものが多い。いつも米の少なくなる正月や二月、三月の気持ちで過ごして食べ物を大切にしなさい。麦や粟やひえや大根や葉っぱなどいろいろな食べ物を作り、米を食べつくして困ることのないようにしなさい。小豆の葉っぱやいもの葉っぱも捨てずに大事に使いなさい。

一　男は畑仕事、女は布を織るなど、一日しっかりと働き夫婦ともよく稼ぐこと。だから美人の女房でも夫のことをおろそかにしたり茶ばかり飲んでいたり遊んでばかりいるようなものは離婚しなさい。

一　特別に広い田畑を持っているものならよいが、田畑が少なく収入が少ないのに子どもがたくさんいる家は、他人に養子に出したり、商店に働きに出したりして、食べ物がなくて困ることのないようにしなさい。

一　健康に気をつけ、病気にならなぬように気をつけること。どんなに精を出して働いても病気になってしまえば働けず、暮らせなくなってしまうのだから気をつけること。

一　たばこをすってはいけない。これは腹の足しにもならず、結局病気になるだけなのだし、お金もかかるし、火事を出すもとであるから。

一　独身の百姓が病気になって田畑の仕事ができないときは、五人組や村中の百姓が助け合って田畑を荒らさないようにしなさい。

一　年老いた親は、大事にし孝行しなさい。年貢さえすませてしまえば、百姓ほど楽なものはないのだから、このことをよく心がけ子どもたちや孫たちにもよく言い聞かせ、健康でぜいたくをしないでかせぐべきである。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　慶安二年(一六四九年)二月二十六日

難解な言葉も何度も読んでみるといいね。

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