広島菜について調べよう。

　広島菜は，日本三大菜漬けの一つです。日本三大菜漬けは，信州の野沢菜漬け，九州の高菜漬け，そして，広島の広島菜漬けです。広島菜の特徴は，ひときわ鮮やかで，茎にまでその美しさが色づいているところです。緑黄色野菜としての栄養価も高く，ビタミンも豊富で，食物繊維が多く，乳酸菌の整腸作用を活発に促し，健康食品としても最適な品であると言われています。

　広島菜はどこで作られているの？

　広島菜は，県北でも栽培されているが，県内一の出荷量を誇る産地は，広島市の市街地からほど近い安佐南区川内地区です。山陽自動車道広島ＩＣのたもと，デパートや大型スーパー，専門店が立ち並ぶ大通りから一歩入ると古川と太田川に挟まれた砂壌土で水はけがよく，昔から野菜作りに適した土地として有名なところです。
　

川内の畑には，たくさんの広島菜が育っていました。(２００５年１１月２７日關撮影)
　
　２ｍも掘れば，水がわくほど地下水の水位も高く，この地で作られる広島菜の質の良さは折り紙付きです。秋から冬にかけ，住宅地に点在する畑は，広島菜の濃い緑に覆われるようになります。肉厚のしっかりした葉は，大きく広がるように成長して，収穫期には１玉２kgにもなります。

　秋の彼岸のころから種まきが始まり，収穫までは約７５日です。「霜が降り，寒くなるほどにおいしくなる。」と言われています。それは，霜が降ると広島菜に含まれる繊維質が柔らかくなるからです。

　広島菜の歴史は？

　広島菜に関しては，２つの言い伝えがあります。約８００年前に，中国から種が伝えられ，その後，京都を中心にして広がったと言われる説と，約３００年前に，広島市観音町に住んでいた人が，京都の本願寺というお寺で，種を分けてもらい，栽培を始めたという説があります。当初は，京菜(きょうな)と呼ばれていましたが，広島でたくさん栽培されるようになって，「広島菜」と呼ばれるようになりました。

広島菜の原点は，木原才次さんです。

　でも，何より有力な説は，木原才次さんに関する説です。川内地区の歴史が記されている『佐東町史』によると，「広島菜は，１８９２(明治２５)年頃川内村の青年木原才次が，京都西本願寺にお参りの帰り，多様性の珍菜(観音寺白菜)の種をもらいうけ，帰郷後，白菜と交配し，新品種を作り出した。それが，広島菜の原点である。」と記されています。

　広島菜が，全国的に知られるようになったのは，１８９４(明治２７)年に，関西にある牡蠣船が，料理の最後にお茶漬けに広島菜を添えたことから評判になったと言われています。広島かきと広島菜は，ずっと昔から切っても切れない関係だったようです。

　平清盛も食べていた!?

　広島菜は，広島市が原産地と言えるでしょう。平安時代の末期に，平清盛が安芸厳島にいた時にも，食膳で賞味されたと伝えられてます。ですから，かなり古い歴史があると言えます。(平清盛が太政大臣になったのが，１１６７年です。)明治時代以降に，「広島菜」と呼ばれ，広く知られるようになりましたが，その人気は，今でも高い評価がされています。

温かいご飯に広島菜は，とても合いますね。

　味わいは，あっさりとして茎にいたるまで全ての部分に豊かな風味があって，飽きのこない上品な味です。口に広がる風味が，程良い歯ごたえと調和します。

　漬け物２０選を確認しよう。

　日本人の食文化とは，とても関係が深いのが漬け物です。日本には，その土地の気候や特産品を活かしたユニークな漬け物がいっぱいあります。先生が，漬け物２０を選びました。

�@ 「松前漬け」（北海道）

　北海道には，特産の海の幸を使った漬け物がたくさんあります。中でも有名なのが，コンブと干しスルメを細かく切り，みりんと醤油で調味した液に漬けるのが「松前漬け」です。松前とは，昔，北海道のことを松前と呼んでいたとことから命名されました。

�A「いぶりがっこ」（秋田県）

　寒さが厳しい東北地方も漬け物王国と言えます。中でもユニークなのが秋田県名産の「いぶりがっこ」です。これは，大根を囲炉裏の天井につるしてけむりでいぶし干しにして，それをぬか漬けにしたもので，独特の歯ごたえと香りがあります。

�B 「金婚漬け」（岩手県）

　岩手県に古くから伝わる漬け物で，ウリのワタをくり抜き，その中にコンブで巻いた大根や人参をつめ，味噌漬けにしたのが「金婚（きんこ）漬け」です。「きんこ」とは陸中海岸の浅瀬にすむナマコのことで，漬け物形状がナマコに似ていることからこう呼ばれています。

�C「たまり漬け」（栃木県）

　徳川家康を祭った東照宮のある日光で名産の漬け物が「たまり漬け」です。たまりとは，熟成したもろみのエキスのようなもので，その液に大根やキュウリ，ナス，らっきょうなどの野菜をベッコウ色になるまで漬け込みます。そのため，野菜の中に発酵熟成したうまみが凝縮されています。

�D「べったら漬け」（東京都）

　毎年10月19日，日本橋小伝馬町にたつ「べったら市」。この名前になった「べったら」とは，こうじで漬けたたくあんのことで，市では漬け物業者の「べったら，べったら」と景気のいいかけ声がこだまするそうです。

�E「野沢菜漬け」（長野県）

　全国的にも有名な「野沢菜漬け」は，赤カブの一種である野沢菜をカブが大きくなる前に茎を塩漬けにした漬け物。約250年ほど前に，京都で修業した健命寺（別名　漬物寺）の住職が，赤カブの種子を持ち帰り特産になったことから野沢菜漬けが広まったといわれています。

�F「ワサビ漬け」（静岡県）

　伊豆と天城は，古くからワサビの産地として知られ，そこで名産となったのが「ワサビ漬け」です。もっとも，昔はぬか漬けのワサビ漬けだったようですが，江戸時代の中期になって駿河（今の静岡市）のワサビ商人が，かす漬けに改良して好評をえたとことから今日のワサビ漬けになったと言われています。

�G「かぶらずし」（石川県）

　海の幸が豊富な石川県には，魚を使ったユニークな漬け物があります。それが，カブを厚手に輪切りにして，その間にブリをはさみ塩と麹(こうじ)とコンブで漬け込む「かぶらずし」です。ただし，ブリは高級魚なので庶民の間では，大根とニシンで漬けた「大根ずし」が一般的だったと言われています。

�H「千枚漬け」（京都府）

　カブを千枚にも切るように薄く切って，酢漬けにしたのが「千枚漬け」です。昔は，乳酸発酵で酸味をつけていましたが，慶応元年（1865年）大黒屋藤三郎という人が，酢漬けをはじめ，そこにコンブや甘みが加わり，今日の千枚漬けになったと言われています。

�I「しば漬け」（京都府）

　京都の大原で古くから漬けられていたのが，ナスやミョウガ，しそなどをきざんで塩漬けにした「しば漬け」です。その名前は，壇ノ浦で滅亡した平家の中で１人生き延びた建礼門院が，しその葉の色から「紫葉漬け」と呼んだことから命名されたと言われています。

�J「奈良漬け」（奈良県）

　酒粕に野菜を漬け込んだ「奈良漬け」も，高級な漬け物として全国的に有名です。その始まりは，江戸時代の初期に，奈良の中筋町の医者糸屋宗仙が奈良漬をつくりはじめたという説が最も有力で，徳川家康も大ファンだったと言われています。

�K「広島菜漬け」（広島県）

　中国地方を代表する漬け物として有名なのが，広島県の「広島菜漬け」です。この広島菜の特徴は，根元から葉先まで鮮やかな緑色をしていることで，これを麹やコンブを使って塩漬けにします。歴史的には，今から300年ほど前，安芸観音の住職が，京都からこの菜の種を持ち帰って栽培したのが始まりと言われています。

�L「寒漬け」（山口県）

　瀬戸内の宇部地方に古くから伝わっている干し大根の漬け物が「寒漬け」です。半干しにした大根を海水につけ，塩気をもたせてから荒縄で軒下につるし寒風の中で完全に干しあげます。12月から1月の厳冬の頃に漬けられることからこの名がついたと言われています。

�M「緋のカブ漬け」（愛媛県）

　愛媛県松山地方に古くから伝わるのが「緋のカブ漬け」です。このカブは寛永4年（1627年），出羽から松山城主に転封された蒲生氏が持ち込んだものとされています。漬け方は，塩で下漬けした赤カブをダイダイの漬け汁で漬け直すもので，果汁の酸味が発色を促し，見事な緋色に染まることからこう呼ばれています。

�N「高菜漬け」（福岡県）

　九州地方の漬け物で有名なのは，「高菜漬け」です。高菜系の菜には辛子油が含まれ，ほのかなマスタードの辛みをもっています。このため，そのまま食べるよりも料理の材料として油炒めにしたり肉と一緒に煮込んだりといった使われ方をすることが多いようです。

�O「壺漬け」（鹿児島県）

　大きな壺に海水を使って漬け込むことからこの名がついたのが，南九州に伝わる「壺漬け」です。その歴史は，今から400年ほど前，豊臣秀吉が，朝鮮出兵したときにも保存食として持参したと言われています。別名は，「山川漬け」とも呼ばれ中国のザーサイに似た作り方をするそうです。

�P「パパイヤ漬け」（沖縄県）

　沖縄県に伝わる漬け物は，南国らしく熱帯系の果物を材料にしたものが多いようです。中でも「パパイヤ漬け」は，パパイヤの実を薄く切って，黒糖と酢で調味した漬け汁に漬け込んだもので，パリパリとした果肉の食感が特徴です。

�Q「キムチ」(韓国)

　韓国は，中国との深い文化交流がある関係で，古くから漬け物に親しんできたお国柄で，「キムチ」が有名です。キムチは，食文化の中心で，その種類は数十種類あると言われています。その特徴は，野菜を漬ける時に，唐辛子やニンニク，果物，アミ（甲殻類の節足動物），イカ，小魚など多くの材料と一緒に漬け込んで乳酸発酵させている点で独特の深い風味を醸し出しています。

�R「搾菜（ザーツァイ）」(中国)

　中国は，日本に負けず劣らず漬け物大国です。日本で有名なのは，カラシナの肥大した根瘤部を一度干してから，塩と香辛料で漬け込んだ「搾菜（ザーツァイ）」です。搾菜は，世界的にも有名で，日本では一般のスーパーでも売られているほど浸透しています。

�S「ピクルス」(ヨーロッパ)

　英語で，漬け物のことをピクルスと言うように，ヨーロッパの漬け物で有名なのが「ピクルス」です。ピクルスは，発酵（主に乳酸発酵）によってつくるものと，発酵させず酢やワインのように保存性のある液に漬けたものの２種類があります。発酵させたものの特徴は，漬け汁にさまざまな香辛料を使うことと酸味がかなり強いことです。これは，肉やチーズ，油っこい料理が多い食文化が影響したものと考えられています。

　全国の漬け物マップで場所を確認しよう。

　都道府県にもマークがあります。３年生では，漬け物の特産地のマークを確認しておいてください。