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研究会当日の朝
いよいよ31日になりました。
朝,妻と両親に見送られて家を出ました。
「まあ,どんなになるか分からないけど,自分の責任をしっかり果たしてこうわい。」
と言いました。母親が,
「自分なりにがんばらないといかんよ。残った2人の子どものためにもね・・・・。」
「うん。分かっとる。」
と,答えましたが,自分の中で気力がかなりなくなっていることに気づいていました。
学校へ着くと,既にテントの準備,受付,湯茶の支度などたくさんの保護者や教官が働いていました。
私の顔を見ると,何とも言えない表情をされるので,なるべく誰にも会わないように,大槻校長先生に言われた通り,研究室に待機していました。
広島大学の深澤先生や院生の方2人が研究室を尋ねて来られました。
「昨日は,お忙しいときにわざわざ・・・・。」
と,言いかけると深澤先生が,
「今日は,どうされるの?」
と,聞きました。
「予定通りやります。うまくいくかどうかは分かりませんが・・・・。」
「・・・・・。」
しばらくすると,研究協議会での司会をしていただく中島小学校の切明校長先生も来られました。
わざわざ葬儀まで来ていただいたのでそのお礼も言いました。
最後に広島大学の池野先生も来られました。
池野先生は,本日の助言者になっていただいていました。
自分が,研究面においてその卓越した理論に尊敬をしている先生なので,この日が来るのを本当に楽しみにしていました。
でも,こちらにそれだけのパワーがあるかどうかが心配でした。
9時30分になりました。
子どもたちも特別教室3に集合することになっています。
研究室の隣なので,子どもたちの声もこちらまで届いています。
特別教室3のドアを開けました。
みんな神妙な顔でこちらを見ました。
あきらの葬式が昨日あったことは,みんな知っています。
「それでは,朝の会をしよう。」
と,いいました。
日直になっている2人が前に出てきました。
「先生と朝の挨拶をしましょう。先生おはようございます。」
「おはようございます。みなさんおはようございます。」
と始まりました。
「朝の歌を歌いましょう。1,2の3。」
子どもたちが学級歌にしている「勇気100%」の曲が流れました。
「がっかりして,めそめそしてどうしたんだ。
太陽みたいに笑う,君が好きだよ。ウォーウォー。
やりたいことやったもん勝ち,青春なら・・・・。」
と,歌声が聞こえると,もうだめでした。
涙が溢れてきて止まらなくなりました。
子どもたちの笑っている元気な顔があきらにオーバーラップしてしまうのです。
「こりゃ,授業できるかな。」
と不安がよぎりました。歌を歌い終わると,
「先生のお話です。先生,お願いします。」
と,日直の二人が,自分の席にかえりました。
子どもたちの前に立つと,「涙なんか流していてはいけない。」というもう一人の自分がささやきかけました。
「みんなね。昨日は,お母さんやお父さんにわざわざ先生の子どもの葬式に来ていただいてありがとうございましたと,今日お家に帰ったら言っておいてください。」
「・・・・・。」
「先生には,みんながいるからいいよ。こんなに元気なみんながいるから・・・・。」
と,言ったものの涙で前が見えませんでした。
子どもたちも普段の明るい笑顔は少なく,神妙な顔つきになっていました。