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順番が違ったらいけない
その夜は,私と妻の両親もそろって小さな部屋の中でこたつの中に入り,ふとんにくるまってそのまま寝ることになりました。
ふと気がつくと,私の父親が,仏壇の前へ座ってずっと動きませんでした。
「父ちゃんも年なんだから,そこに座っていてかぜをひいたらいかんよ。早く寝ないと。」
「かまんかまん。線香の煙が,絶えないように線香番をするから,お前らは,これからたいへんだから早く寝えよ。」
「ううん。でも,今日は,研究会の資料を仕上げて,明日学校で印刷をしないといけないから,今日は,寝れないと思うので,自分のことは,心配しなくていいよ。じいちゃんこそ,いいから早く寝てよ。」
「うんうん。仕事もがんばれよ。
お前が,しっかりとがんばることをあきらも望んでいると思うよ。
応援してくれていると思うよ。」
と言いながら涙を流していました。
脳梗塞になって,今では右半身が自由に動かなくなった父でしたが,懸命なリハビリと,精神力によって元気に生きています。
母親は,
「こんな自分が生きていて,なんであきらが先に死んでしまったのかと残念がっている。」
と,父親が言っていたことを後で教えてくれました。
両親は,定年退職をしてから,お四国参りがライフワークとなっていました。
1年に春と秋の2度,四国八十八カ所を,お遍路さんになって,巡礼をするのです。
最近は,父親の体が芳しくないので,バスツアーでまわっているようですが,以前は,夫婦2人で仲良く自家用車で何回もお参りをしていました。
「これからは,あきらのためにもお参りをしてね。」
「もちろん。あきらのためにお参りするよ。
でも・・・・・順番が違ってはいかんよね。」
「別に年老いた者が先に死ねとは言わないけど,なんで4歳ぐらいで死なないといけないのかな。
本当に自分が何もできなかったことがくやしいよ。あきらも恨んでいないかな。」
「浩和・・・・・。広島でも一番の治療施設であきらを見てやったんだから恨んだりはしていないよ。
これから,あきらのためにあんたががんばらないといけないよ。」
「あぁ。でも気力がなくなってしまったよ・・・・。」
そんな会話が続いていました。
結局私の方は,寝たのは,午前5時をまわっていました。
線香番も午前4時頃から母親に代わり,夜通し線香が絶えないでいました。