ランドマークを見つけよう。  ランドマークを見つけよう   最愛の娘「あきら」です。  戻る



    自分の家にやっと帰ってきた「あきら」



 官舎に着くと,タクシーがとまっていました。
 両親や子どもたちも今着いたようでした。
 道がとても混んでいてタクシーもかなり時間がかかったようです。
 呆然とした状況で運転していたので,混雑していることなんて気にならなかったのです。


 妻が,あきらを抱きかかえて,階段を上がります。
 5階まで上がっていると,あきらが喜んで駆け上がっていたことが思い浮かびます。
 今,こんな姿で官舎に帰るなんて厳しい現実でした。


 502号の部屋に着くと,両親がふとんをしいていました。
 あきらをいつも寝ていたようにそこに寝かせました。
 武内副校長先生が,
 「關さん。北は,どっちかな。」
 台所を指して,
 「あちらが北です。」
 と,言うと,武内副校長先生は,さっと立って,あきらの方へ行きました。


 「お母さん。北枕にしないといけませんよ。私といっしょにふとんをなおしましょう。」
 と言って,ふとんをくるりと回して,あきらが北枕になるようにしてくれました。
 しばらくすると,官舎の人たちがあきらに会いに来てくれました。


 妻は,同じ官舎の人の顔を見ると,すがりついて泣いていました。
 みんな信じられない様子でした。
 1週間前まで元気にしていたあきらをみんな知っていたからです。
 妻がいつも好意にしてもらっている堀口さんが来てくれると妻は,もう立ってはいられませんでした。
 あきらの友だちだったつよし君。
 涼太朗の友だちである品川君。
 そして,品川君の一年生になる妹さんは,あきらにとっては「お姉ちゃん,お姉ちゃん。」と言って大好きなお姉ちゃん的存在でした。
 みんなあきらの冷たくなった姿を見て,声も出ないようでした。




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