ランドマークを見つけよう。  ランドマークを見つけよう   最愛の娘「あきら」です。  戻る




    ランドマークから自分を見つめる





 町の中でのランドマーク見つけの後は,自分のランドマークについて考えてみる場を設定しようと考えていました。
 自分の目立つところ,いいところ,個性をどんどん見つける。
 「自分が自信をもってできること。」は何か。
 自分がアピールできるものは何か。
 どんなことでもこれだけは・・・・・というのが誰にでもある。
 そのよさを見つけることが大切であると考えていました。


 でも,
 「みんなのランドマークは何かな?」
 という大切に持っていたことを問おうとした瞬間にあきらを思い出しました。
 それは,自分なりの答えとして,大切なものは,「命」だよということを考えていたのです。
 人間には,大切な「命」がある。
 もちろん,自由に動ける足がある。
 話せる口があり言葉がある。
 そんなことを思うと,涙が出そうでした。
 事情も何も知らない先生方に,お涙頂戴になったらあきらも喜ばないだろうなんて考えてしまいました。
 結局,その発問はできませんでした。
 それで,内容的には,自分では不満の残る授業になってしまいました。


 研究室に戻ると,脱力感がありました。
 「こんなことをするために,あきらに100%集中できなかったのか。本当に情けない男だ・・・・。」
 という無力感がおそってきたのです。
 「あきらごめんね。」
 とつぶやくしかありませんでした。


 その後は,助言や司会の先生方の昼の弁当を手配するために動きました。
 研究室で,昼食を食べましたが,重苦しい雰囲気でした。
 昼からは,各教科の研究協議会がありました。
 「これをしっかりしないと。」
 と自分に言い聞かせて臨みました。


 生活科に対する自分の思いを主張しました。
 現行の生活科に対する批判もまじえて意図が十分に伝わったとは言えないまでも役目は,果たせた満足感がありました。
 司会や助言の先生方も帰られた後,研究室から,松山の両親に電話をしました。


 「もしもし。浩和。今,研究会終わったから。最後までちゃんとやれたよ。
  授業は,やっぱりうまくいかなかったけど,何とか役目は果たせたと思うよ。」
 「そう。よくがんばったね。浩和も気力をなくしているようだけど,残った洸太朗と涼太朗にさみしい思いをさせないようにね。」
 と言ってくれました。
 「まだ寒い日が続くから体に気をつけてな。」
 と,言って電話を切りました。
 明日は,2日目の研究会の日でしたが,大槻長先生が研究室を尋ねてきてくれました。


 「關先生。今日は,最後までよくやったね。しばらく休んでくださいね。」
 「ありがとうございました。明日の土曜日と日曜日に休んで来週から何とか元気に学校へ来ますので・・・・。」
 と言って別れました。


 葬儀の時も大槻校長先生は,自分の孫のようなあきらに対してずっと涙されていました。
 いつも穏やかでやさしい大槻校長先生に何もお返しをすることができないような気がして自分が情けなくもありました。
 帰宅する途中,校長室の前で伊東亮三先生にお会いすることができました。
 「關君。君は,立派だ。しっかりとした受け答えで私も感心したよ。」
 と,これ以上にない励ましの言葉を直接頂きました。
 あきらに100%集中できなかった自分の思いが少しは報われた気がしましたが,
 「何のために仕事をしてきたんだろう。」という自問自答を繰り返していました。


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