ランドマークを見つけよう。  ランドマークを見つけよう   最愛の娘「あきら」です。  戻る



    生命線がない!?



 26日になりました。
 午前10時頃あきらは,集中治療室から小児病棟に移すことになっています。
 松山から私の両親や妻の父親もかけつけてくれました。
 あきらのそばに私たち夫婦は,ソファとパイプいすで寝ることになります。


 あきらの手を握り,何度も
 「あきら。あきらちゃん,お父さんともう一回だけでいいから買い物へ行こう。
  手をつないで買い物へ行こう。ガムを買いたいんでしょう?」
 と話しかけます。
 でも,あきらは,何の反応もなく眠っています。


 つらい中で,あきらと最後の夜を迎えました。
 ベットで寝ているあきらは,鼻や口は,出血してかたまっている状態です。
 妻がふき取ろうとしても固まっていてとれません。
 ふくときに傷をつけそうでそれ以上は何も出来ませんでした。
 あきらの手を握り,
 「お父さんと,もう一回言ってよ。お父さんとビッグへ行くんじゃないの,あきら。あきら・・・・・・。」
 と,何度も言いますが,反応は何もありませんでした。
 「なんで・・・・・。なんでこうなるんや。」
 怒りがこみあげながらも,あきらの手を握りしめていました。


 そして,私は,あきらの手を何度もさすりながら,
 「あきらちゃんは,お父さんの何ですか?あきらちゃんは,お父さんの何ですか?」
 と繰り返し聞いていました。


 ふと,両手で握っていたあきらの右の手のひらを広げて,汗ばんだ手をふいてあげようと思いました。
 今まで考えて見ると,あきらの手相なんて見たこともなかったので,どんな手相をして生まれてきたのだろうと思いました。
 手相は,学生のときに易者の人に自分の手相を見てもらい,自分の性格や将来のことまで当てられた経験がありました。
 それ以来,自分でも趣味でよく友だちの手相を見て,その人の性格や生き方を冗談で話題にしたりしていたのです。


 静かに手のひらを広げて見てみました。
 すると,あきらの手相には,生命線がないのです。
 「あれ?・・・・・。」
 驚いて声を失いました。
 右手になくても,左手にはあるだろうと思い,左手を広げてみました。
 すると,左手にも生命線がありませんでした。
 「これは・・・・・・。」
 妻が,不安そうな顔をして見ていました。
 私は,妻にこれ以上心配をさせたくなかったので,何も言えずに手をきれいに拭いてあげて,元通りに握らせてあげました。



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