ランドマークを見つけよう。  ランドマークを見つけよう   最愛の娘「あきら」です。  戻る


    突然の電話で



 朝の5時。突然の電話の音で目を覚ましました。
 「こんなに早い時間に,もしや。」と悪い予感がしました。
 受話器から聞こえる泣いている妻の声。予感は的中したのです。

 「あきらが・・・・。あきらが,容態が急変して・・・・・。もうだめかも知れない。」
 「何言よんや。しっかりせんと。」
 「もう今は,酸素マスクをつけて,点滴して・・・・。」
 「どうしたん?」
 「朝5時ごろまた,痙攣をおこして意識がなくなって・・・・。今日の朝,病院に来れない?」
 「だめだな。月曜日だし,一度学校へ行って自習なら自習のことを言って昼ごろ病院へ行くよ。」
 「そうよね。分かった。それじゃ。」
 「しっかりとせんといかんよ。あきらなんだからだいじょうぶだよ。」
 「う・・・・・ん。」
 と,元気なく妻は,電話を切りました。

 今思うとすぐに病院へかけつけてあげられなかったことを妻に申し訳なく思います。
 でも,その時,まさか死に至るような病気になったとは思いたくなかったのかも知れません。
 そんなに大げさなことはしたくなかったし,自分の仕事も一番大事な時期で自由にならないことを思ったのかも知れません。

 でも,そう言った後で,「病院へ早く行きたい。あきらの顔を見たい。学校は,休もうか。どうしよう。」と迷っていました。
 その後は,なかなか寝れないで電話を枕元に置いて,うとうととしていました。


 朝,6時。またも電話の音。
 「やっぱりだめ。父親に話したいことがあるのですぐに病院へ来るようにお医者さんに言われた。」
 「そう・・・・か。」
 ことの重大さを認識した私は,朝の支度をしてすぐに学校へ行く準備を始めました。
 ふと気がつくと,いつもはなかなか起きてこない洸太朗と涼太朗の二人がもう起きて,朝の準備をしていました。
 小さい子どもながらにことの重大さが分かったのかも知れません。


 朝食べるために,昨晩コンビニで買っておいたおにぎりを食べ,子どもにも好きなサンドイッチを食べさせて,歯磨きをして家を出ることにしました。
 「洸太朗。今日は,松前のばあちゃんが来てくれるからちゃんと言うこと聞いてがんばれよ。お父さんとお母さんは,病院に泊まることになると思うから。」
 「分かったよ。こっちのことは,心配しなくていいよ。」
 「涼太朗も元気かぁ。」
 「はい。元気でーす。」
 と,いつもの陽気な笑顔を見せて学校へ出かけていきました。

 朝早く学校へ行き,研究室で,子どもたちに今日勉強することをメモしました。
 その日は,全校朝会があったので,運動場へ出かけていく武内副校長を呼び止めて,
 「すみませんが,昨日子どもが入院したので,今から病院へ行きたいので年休をください。」
 と言うと,
 「そう。それは,たいへんだね。分かりました。」
 と言って,
 「学校のことは心配しないですぐに行ってあげなさい。」
 と言ってくれました。
 でも,あまり大したことではないだろう。いつものかぜ程度の病気だろうという雰囲気で受け取っているようでした。
 朝会が終わり,子どもたちに今日の勉強の予定を黒板に書いて先生がいなくてもがんばるようにと告げて病院へ直行しました。
 子どもたちには,何事もないように明るく振る舞いました。
  F病院は,広島市では救急病院として知られています。
 国道2号線沿いにあり,インフルエンザが大流行している時期で,病院は,早朝にもかかわらず,玄関のところからすでに満員の状態でした。



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