かき(牡蠣)の種類と特徴は

　かきは，軟体動物―二枚貝綱―翼形目―イタボガキ科に属する二枚貝です。世界には，１００種類以上のかきがあると言われ，そのうち，日本では，約２０種類のかきがあると言われています。産業的に有名なのは，日本，韓国に代表されるマガキです。マガキは，広島型，北海道型，宮城型，熊本型に分類されています。日本で生産されているマガキ以外の主なかきには，イワガキ(日本海，酒田市)，スミノエガキ(有明海)，ケガキ(房総)，イタボガキ(淡路島，石川県)があります。この他にも日本産ではありませんが，フランスガキやバ−ジニアガキ，オリンピアガキなどがあります。

１　石から掻き(かき)落としてとることから。または，殻を欠き(かき)砕いてとることから「かき」と呼ばれる。

２　「カ」は，貝，「キ」は，着るの意味がある。つまり，貝を着ているのがかきである。

３　キハカヒ（際貝）の反対の意味。

４　重なり貝の意味がある。

５　「マ」は，同類中で，代表的・中心的なものを表す。真の〜ということ。どちらの性が，強くても同じように生殖腺が白いので，全て雄だと思われる「牡蠣」の字が当てられたと言われている。（牡(おす)と読む。）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　▲　４種類のマガキの形質比較

　かき(牡蠣)の生態

　かきの身は，アサリやハマグリと同じで，二枚の貝殻に包まれています。でも，アサリやハマグリは，すべて同じような形をしていますが，かきは，周囲の環境によって細長くなったり，丸くなったり，殻の形が変わります。二枚の貝殻が，貝柱と靱帯(じんたい)でくっついています。かきは，アサリやハマグリと違い，貝柱は１つしかありません。かきの殻は，左殻と右殻があります。よく膨らんでいる方が左殻で，海中の岩などに付着して，平らでふたのようになるのが右殻です。生まれた後，気に入った場所が見つかると左殻を下にして，付着し，かきは，一生その場所を離れることはありません。

　次の図は，かきの殻をとった図です。右下の図は，外套膜を取り除いて，中身を見たところです。殻を開けてみると，貝柱や外套膜(がいとうまく)しか見えませんが，えらをはじめ，心臓，口，胃，腸，肛門などもちゃんと付いています。

　かきの餌は，植物性プランクトンやその破片です。食事は，昼も夜も，休みなく一日中行っています。餌を取り込むのは，エラの役目です。エラは，海水を吸い込み，この中に浮かんでいるプランクトンを取ります。かきは，餌をとるのに大量の海水を取り込みます。かき１個が，ろ過する海水の量は，１時間に約１０リットル（ポリバケツ１杯分）にもなります。

　かきは，フランスガキのように１つの体に卵と精子を持つもの（雌雄同体）とマガキのように別々に持っているもの（雌雄異体）があります。しかし，マガキは，今年は雄で精子を持っていても，翌年は雌にかわり，卵を持つようになったり，あるいはその逆の場合もあります。雄と雌が，年によってかわることがあります。とても不思議ですね。かきの産卵の方法は，マガキのように卵を海水中に放出する種類と，フランスガキやイタボガキのように親ガキのエラのところで，卵がしばらく留まっている種類があります。マガキの場合，雄と雌の親が，卵や精子を海水中に放出し，雄が放精することで，海水中で受精が行われます。うまく受精すると，卵（０．０５〜０．０６mm）は，次々と分割していきます。身を包む貝殻は，受精後，約１日，たった１日で作られます。その後，約２週間，海水中のプランクトンなどを食べて過ごしますが，約０．３mmぐらいの大きさになると，付着する場所を探します。足を出して物の上を動き回ったり，気に入らないとその場所を去ったりします。気に入った場所が見つかると，左殻を下にして，固着材（セメント質）を出して付着します。そして，かきはその場所を一生離れることはありません。広島湾でのこのマガキの産卵は，７〜９月に盛んに行われるので，養殖の場合，この間に採苗が行われます。