かき(牡蠣)の自然的条件

　かきといえば広島というほど全国的に有名です。なぜ，広島ではたくさんのかきが生産されているのでしょう。先生は，愛媛県の出身なので，広島に赴任して以来，素朴な疑問をもって追究しています。周囲を海に囲まれた日本の広い海域のなかでも，瀬戸内海，とりわけ広島湾が，かきの養殖の理想的な環境に恵まれているのです。

　出典：帝国書院編集部編楽しい小学校社会科地図帳(国土地理院発行の２．５万分の１の地形図より)

　日本のかき生産量ランキングは，第１位 広島県　第２位 宮城県　第３位 岡山県 第４ 岩手県　第５位三重県となっています。

生産量の高い場所を日本地図で確認してみましょう。

　瀬戸内海が，理想的なかきの養殖場と言われるのは，かきの養殖に欠かせない条件を満たしているからです。

　養殖場の第一条件は，筏が，安全に設置できる場所にあることです。それは，竹で作られた筏を使うためには，波が穏やかでないと筏が上下左右にゆられて，育てたかきが海底に落ちてしまいます。島々に囲まれた瀬戸内海は，波が穏やかで筏が壊れにくく，養殖をするのに適しているのです。このように，広島湾は，島や岬に囲まれており，風波や潮流の影響を受けにくく，絶好の条件に恵まれています。また，水温は，かきの生理機能に影響を及ぼします。夏の上昇した水温が産卵に刺激を与え，２０℃以下に下がった秋の水温がグリコ−ゲンの蓄積(かきの身入り)を始めます。よって，夏に水温が上がらなかったり，秋に水温が下がらないと，よいかきを早期に出荷することがむずかしくなります。瀬戸内海の年間の海水温の変化が，かきの産卵，成長のリズムにぴったり合っているのです。かきにとってすごしやすい環境が瀬戸内海であると言えます。その点でも，広島湾の水温分布は，適切な条件を満たしているのです。

▲水温の変化(平成１３年度広島湾内平均)　

　　広島市水産振興センタ−の資料より

　広島湾に流れ込んでいる太田川の存在があります。太田川の水の豊かな栄養分によって，広島湾では，かきの餌となる植物性プランクトンがよく育ちます。このため，広島のかきは味の良い高品質なものができるのです。かきは，夏に産卵します。生まれたかきの幼生は，２週間程すると岩などの固い物に付着し，一生をその場所で過ごします。瀬戸内海では，たくさんのかきの幼生が植物性プランクトンの豊富な瀬戸内海で育ち，多くのかきが養殖できるのです。