■　ある貴族の一日

　朝起きると，まず自分の生まれた星の名前を低い声で７回となえる。星は，自分の運命を決める。次にようじで歯をみがき，顔，手を洗って，西に向かい仏の名をとなえて，ふだんから信仰している神にいのる。それから昨日の出来事を日記に書き，かゆを食べる。(食事は１日２回)そのあと髪にくしを入れる。女は毎日，男は，３日に１度でよい。次に，手足をつめを切るが，丑(うし)の日には手のつめ，寅(とら)の日には足のつめを切る。そのあと，おふろに入る。ただし毎日ではなく５日に１回である。入浴にもやかましいきまりがあって，１日に入浴すると早死にし，８日であれば長生きする。１８日に入ると盗賊にあい，午(うま)の日に入るとあいきょうがなくなり，亥(い)の日だと恥をかく。こうしたあと，注意深く衣装や冠をつけてようやく宮中に出かける。宮中の門までは牛車で，あとは徒歩である。人と会ってもなるべく口をきかない。うわさ話などもってのほか。口はわざわいのもと。わずかばかりの行政の仕事，木簡への書きつけなどをした後は，宴会や碁に加わったりした。・・・・・。