■　殖産興業

　およそ強国，弱国のちがいはその国民の貧富に由来し，国民の貧富は物産の多いか少ないかによる。そして，物産の多少は国民が工業に従事し努力するか否かによるが，その起源については政府官庁の指導・奨励によらないことはかつてなかった。・・・・政府に願いたいことは・・・・一定の規則を設けて殖産興業の事業を興し，国民の一人といえども怠惰であったり参加できなかったりということがないようにし，国民を豊かな生活にまで達するようにしたい。国民が富裕になれば国家も富強になるのは必然のことで，智者でなくてもわかることである。このような成果をあげれば列強に並走するには困難ではないであろう。

〔大久保利通文書〕