■　守護・地頭の設置

●　文治１(１１８５)年１１月１２日，・・・・今度の事件は，幕府にとって重大事なので，その措置や経過について頼朝が大へん心配していたところ，前因幡守の大江広元が次のように申しあげた。「世は末世で，凶悪の者が時を得顔にのさばる時代です。反逆者は今後もあとをたたないでしょう。しかし東海道の地域内は頼朝公の御居所なので鎮静していますが，反乱はきっと他の地域で起こることでしょう。それを鎮圧するために，その都度関東の武士を派遣することになれば，人々の重荷となり国費の浪費ともなります。そこでこれを機会に諸国に命令して，国衙領・荘園ごとに守護・地頭を任命されれば心配することはありません。早くこの事を朝廷に申請してください」と，頼朝は感服し，広元の意見のように裁定した。

　１１月２８日，諸国全般に守護・地頭を任命し，貴族・寺社の荘園や国衙領の別なく，兵粮米を一段につき五升の割で徴集することを，今夜，北条時政が中納言藤原経房に面会して申し入れたという。

〔吾妻鏡〕

●　文治元年１１月２８日・・・・聞くところによると，北条時政が今夜藤原経房に会見するということだ。きっと重大事を提示するのであろうか。又聞くところでは，あの北条時政ら頼朝の家来たちが，五畿・山陰・山陽・南海・西海の諸国を分割して賜わり，荘園・国衙領を問わず，兵粮米段別五升を徴収したいという。ただ単に兵粮米徴収だけでなく，田地全般の支配もしそうだという。言語道断のことだ。

〔玉葉〕