〔位置〕

　倭人は，帯方郡の東南方の大海中にあって，山がちの島に国をつくっている。以前は，百余の小国に分かれ，漢の時代に朝貢する者があった。今，魏に使節を送ってくる国は３０国である。帯方郡から倭に行くには，半島の海岸ぞいに航行し，・・・・・対馬国から一支(壱岐)，末盧(まつら)国，伊都国，奴国，不弥国，投馬国をへて，南の邪馬壹(台)国に到着する。そこが，そこが女王の都をおいている国である。・・・・・帯方郡から女王国までは１万２０００余里である。

〔習俗・社会〕

　その習俗では，身分の高い者は４・５人の妻，身分の低い者でも２・３人の妻を持っている。・・・・法を犯した場合は，軽罪では妻子を没収して奴隷にし，重罪ではその家族・一族を滅ぼすという厳しいものである。身分の尊卑の別もみられる。・・・・租税を収める倉庫があり，国々に市があって交易を行い，大倭という役人に監督させている。女王国より北の地域には，とくに一大率を置いて諸国を検察させている。諸国はこれをおそれている。一大率は伊都国に常駐している。・・・・下戸が大人と道路で出会うと，後ずさりして草むらへ入り，話をする時には，うずくまったりひざまずいて，両手を地につけて敬う態度をとる。

〔政治・外交〕

　邪馬台国では，以前は男王をたてて７・８０年を過ごしたが，内乱で何年間も戦いが続いたので，女王を擁立した。それが卑弥呼である。女王は巧みに呪術を行って人々をひきつけることができた。すでに高齢であるが夫はいない。景初３(２３９)年６月，女王は大夫の難升米(なしめ)らを帯方郡に派遣して魏の天子に朝貢することを願ったので，帯方郡長官の劉夏は，郡の役人を引率させて，使節を魏の都落陽に送った。同年１２月，魏の明帝は詔書を出し，倭の女王に次のように告げた。「・・・・今，お前を親魏倭王とし，金印紫綬を授け，・・・・。」

〔卑弥呼の死〕

　卑弥呼が死んだ時，大きな墳墓を作った。直径は，１００余歩もあり，殉死者は奴碑１００余人あった。その後，一度男王が立てられたが国中が服従せず，互いに殺しあって千余人も死んだ。そこで，卑弥呼の一族の女で１３歳になる壱与(いよ)を王とし，やっと治まった。

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